明鏡止水

割とちゃんとまとめた感想とぐちゃぐちゃの私信

演劇部を作ろうとしたら学校で一番怖い先生に校長室で頭を下げられた話



わたしは小学校に出入りする仕事をしているのですが、日の落ちるのが早くなった今の頃、小学校時代の幻の演劇部の話を思い出した。


もしかしたら前にツイキャスとかで話してて、前言ってたじゃん知ってるわ、何思い出したとか嘘ついてんの、ってなったらごめん。ほんとに最近思い出したんだもん。





登場人物


ブラスバンド部初期メンバー。

打楽器パートのリーダー。

友達と使ってる過疎ったチャットで某アイドルの悪口を書いたら「つんみ死ね」と書き込まれた。


Aちゃん 

ブラスバンド部初期メンバー。

姉が2人おり下ネタを仕入れてきては教えてくれる。特別支援学級の若い先生に読めないギャル文字で書いたラブレターを送った悪ガキ。


Bちゃん

幼稚園からの幼なじみだけど話したことがほぼなく、私が「かわいいね」とナンパしたことから仲良くなる。一番下ネタに疎かったのにお父さんの前で魚肉ソーセージをエロく食べた話をして全員を引かせた。


Cちゃん

6年生になって転校してきた。当時では珍しく自分のパソコンを持っていて、パソコン関係に詳しかった。離婚した母親が彼氏を連れ込んでにゃんにゃんしてるところを見てしまい我々が爆笑しながら心配した(優しい)



Fちゃん

ブラスバンド部の後輩。



M先生

学年主任。顔は深海魚。

学校でも一番怖いと有名であり、よく怒号が響く。納豆が匂いすら嫌いで給食が納豆のときは教室から逃亡する。



担任。

メガネ。

喧嘩をするときは性根を入れろ、が口癖。性根が何かよくわからず聞いてた。


校長

酒焼け声のおばちゃん。

うちの小学校の伝統を潰していった。






それは確か6年生の10月とか11月の頃。ブラスバンド部を引退した。3年生の頃からブラスバンド部だった私たちは平日の放課後は毎日練習をしていたため、放課後に遊びに行くことがあまりなかった。引退して暇になった放課後、やることがなくてブックオフに行ってはエロ漫画を立ち読みしてみんなで情報共有していた。帰りにはサークルKでスティックチーズケーキを買って食べた。


私はクラスではA B C4人組でよく連んでいて、まだ携帯を持ってなかった子もいた当時時間を合わせてチャットルームで会ったりしていた。あとはだいたい休み時間に空き教室でエロ情報を共有していた。


あるときAちゃんが「演劇部に入らない?」と言った。今でこそ演劇が好きな私だが当時は全く興味がなかったので全然入りたいと思わなかった。しかもやっとブラスバンドを引退して時間ができたところだったし、そもそももうすぐ卒業する。今さら部活に入るなんて、と思っていた。それにうちには演劇部なんてない。


Aちゃんによると5年生でブラスバンドの後輩のFちゃんが演劇部を作りたくて校長先生に掛け合っているところだという。そのためにある程度の部員が必要であり、Aちゃんに声がかかったらしい。


でも人前に出て演技とか恥ずかしいしそう思って断るつもりでいた。しかしAちゃんは「別に出なくても裏方でいい、私は衣装を作りたい!」と言う。 Bちゃんも衣装を作るというのに賛成した。 Cちゃんは私に「我々は文章書くのが得意だから台本を書こう」と持ちかけた。役者には興味がなかったが、たしかに物書きになりたかった私は台本を書くのなら是非やってみたい!そう思って承諾した。


それからはエロトークをやめて演劇の話をした。AちゃんBちゃんはどんな衣装を作りたいかを考え、可愛いドレスを作りたいという話になった。せっかく作るなら自分たちも着たいということで役者もやりたいという話にもなった。Cちゃんと私もその衣装に合わせた話を考えた。当時西村京太郎を好んで読んでいた私がどんな話を考えたのかは覚えていない。


しばらくしたら周りにも話が回り、4人以外にもやりたいという人が現れた。5年生にも何人か部員希望が増えたらしく、このままなら実現しそうだという話になった。


そんなあるときだった。教室の外からM先生が現れ、我々4人の名前を叫んだ。「来い」との声に4人は怯えて外に出た。うちの小学校は特殊なオープンスペースだったため扉がなく、廊下に出されたら全クラスから丸見えだった。


ただ我々は何かやらかした記憶はない。なんだ、とみんなが思った。横一列に並べられた4人。めちゃくちゃ怖かった。


M先生は言った「お前ら演劇部作るらしいな」なんだろう、先生も入りたいのかな。いや違う、先生は確実にブチギレている。なんでだ。


M先生の話によると、Fちゃんが校長先生に演劇部を作りたいという話をしたそうで、そこに我々の名前もあった。どうやら担任や学年主任に相談もなくいきなり校長に直談判に行ったという事実が良くなかったらしい。信用がどうたらこうたら、会社だと社長に直談判するのはどうたらこうたらという話をされたけどいまいちピンとこなくていつまで経ってもなんで怒られているかよくわからず泣いた。


私は途中で勇気を振り絞って言った「でも5年生がやるって言ったことで、私たちは演劇部を作るなら入りたいと言っただけ」「6年生が5年生のせいにするんか!」M先生の罵声で終わった。


でも事実、我々は、少なくともわたしは演劇部を作る話はすでに進んでおり、校長先生から「とりあえず部員を集めてきなさい」的なことを言われて部員集めをしていると思っていた。しかしどうやらFちゃんは独断で動いていたらしく、部員が集まったところでやっと校長室に直談判に行ったらしい。そこまで責任を負えと言われても知らない。そもそもAちゃん以外はFちゃんと会ったこともなく、同じ部活の私もほぼ関わりがない。ただ演劇部を作りたいという後輩を応援しようとしただけだったのだ。


M先生は怒りながら順番に我々を突き飛ばした。わたしは3番目くらいだったのでどのタイミングで突き飛ばされるのかめちゃくちゃ怖かった。かなり力が強くてよろけた。後ろの様子はわからなかったけど多分3クラス全部がこっちを見ていた。


怒られ終わって教室に戻ると担任が少しだけ慰めてくれた。しかし担任からも「そういうことは担任として教えてほしかった、残念だ」みたいなことを言われた。今なら「社長に直談判」のヤバさはわかるが、それと「校長に直談判」が小学生の行動として同じくらいヤバいのかは未だにわからない。校長先生に対しての学年主任や担任の立場の問題だったのかなぁと思う。


我々はというと突き飛ばされたときの私の顔が変だったという話なんかを面白がり盛り上がっていた。みんな泣いていた癖にアホ小学生である。


その日家に帰って親にその話をした。理不尽だという思いはあったが、大事にしてほしいわけでもなかったので「ま、しゃーないね」みたいな話で終わった。


しかしその日、母の元に電話が来た。PTA会長の親だった。どうやら私以外の3人の親の誰かが突き飛ばされたことを体罰だと問題にしたらしく、PTA会長の耳にまで入り、学校に連絡することになったらしい。


翌日、我々は校長室に呼び出された。校長室のソファに腰掛けると、校長の他に担任・M先生がいた。


M先生は頭を下げ「カッとなって突き飛ばして申し訳なかった」と言った「ただ自分たちに話してくれなかったことが悲しかった」的な言い訳があったような気がする。担任も突き飛ばされたのを見ていながら庇うでもなく児童の味方をしなかったことを謝った。面白がりの我々は心の中でニヤニヤしながらそれを許した。「すごいぞ、あのM先生が頭を下げた。PTA会長すげー」みたいな感じで思っていた。


しかし結局演劇部設立の話は立ち消えになった。もしかしたらそのあとできたのかもしれないが、私たちの代では少なくともできなかった。ちなみに私のすぐあと弟が入学したが演劇部の話は聞いたことがないのできっとその後もできなかったのだろうと思う。そこだけは悲しかった。


まあ我々のなかではちょっとした笑い話だったのだけど、どんな演劇を作ろうと考えている時がものすごく楽しかったので、その話ができなくなったのは寂しかった。



今考えると部活を作りたい!となって部員を集めて、校長先生に直接相談に行くことが、小学生として問題だったのかと疑問に思う。校長先生に直接お願いするのはよくない、というのは小学生として知っておかなくてはいけないルールだったのだろうか。


例えばいじめがあったときに担任じゃなくて直接校長先生に相談に行くのは担任としては少し悲しくなるのはわかる。しかし、子どもにとって校長先生が最も話しやすいと感じていて校長先生に相談した、ということも考えられる。悲しい気持ちになりこそすれ、そこで激怒する気持ちがわからない。


そもそも我々は直接相談に行った張本人ではなく「部活を作りたい」という後輩に名前を貸しただけだ。校長先生に直談判に行くことを指示してもなければその後輩と会ってすらいない。このことは結局「5年生のせいにするのか」という言葉で掻き消されてちゃんと説明できてないままだ。このとき我々に責任は本当にあったのか。


そして結局演劇部は作られなかったがそれについての話はどうなったのだろうか。説明はないままだった。


体罰については謝罪を受けたのでいいとして、この辺は小学生のときから疑問に思っていたが大人になってもやはり疑問なままだ。


もうひとつ大人になってひとつ気になったことがある。


それは校長室に呼ばれたことだ。我々は校長室のソファに座り、先生に頭を下げさせたことを半ば武勇伝のように思っていた。とはいえみんなに触れ回ったりはしていない。


我々が怒られたのは6年生フロアの真ん中。みんなに見られながら怒られ、突き飛ばされた。


しかし謝罪は閉ざされた空間で行われた。我々が謝罪を受けたことをみんなは知らなかった。


実は中学生に上がったとき、クラスの女子がこんなことを言っていた「そういえば小学校のとき演劇部作るとか言ってみんなの前で怒られてなかった?」


我々はたしかに謝罪を受けた。しかしみんなのなかでは「あいつらなんか変なことして怒られてるわ」という印象だけが残っていた。


みんなの前で怒ったならみんなの前で謝罪すべきだ。と、今考えると思う。


まあ先生は体罰について謝罪したのみで、怒った内容については特に訂正されなかったのでそこは誤解というわけではないのかもしれないが。


まあこんな感じで演劇部はできなかったのだが、これってどうなんですかね?この話他のみんなに喋ったことが実はあまりなく、我々も笑い話に昇華したため理不尽を口にすることなく終わったんですが、今考えても怒られることだったのかなと思う。


ちなみにファミマにもスティックのチーズケーキはあるのでとてもおすすめです。



鼻水が止まらないのでそろそろ冬が来ると思います。